テーラードアイテムは今もコレクションの中心に存在し続けるものの、ポール・スミスにとって重要なのは気楽さや着やすさです。クリーンで細身のテーラリングは70年代を意識しており、丈の非常に長いトラウザーズは、フライフロント仕様でモダンかつミニマルな印象を与えます。

素材とディテールは今シーズンも重要で、メルトン素材のクラシックなダブルブレステッドコートにはコントラストステッチを施しローエッジで仕上げている一方、チェックやハウンドトゥースといった英国らしさを表現するテーラリングが、軽量のイタリア製生地の持つしなやかさと融合します。

アーカイブプリントは、新鮮にアップデートされます。デザイナーとして東京を訪れるようになった80年代に食品サンプル専門店で見つけたプラスティック製のスパゲッティプレートは、当時フォトグラフィックプリントの柄としてウェアにあしらわれました。 今シーズン復活したこのプリントは、柄の大きさを拡大したり再編集を施すことで、ウール素材のニットの柄や、マキシ丈のダウンジャケットにプリントで表現されます。

同じく80年代に発表したファックスプリントは、FAX機により誤って細長く引き伸ばされたPaul Smithロゴにインスピレーションを受けており、シャツやジャージなどのアイテムにあしらわれます。

カラーパレットにはティール、テラコッタ、クレイといったナチュラルなトーンが並び、それらがコレクションでポジティブネスと強い存在感を示す色鮮やかなスカイブルーを引き立てます。

太畝のコーデュロイがコレクションに活気を与えるとともに、ダウンジャケットやスニーカーによりプロポーションが強調され、ファンタジーな雰囲気を作り出します。

デニムは、ローデニム、ウォッシュドデニムに加え、フローラルカモフラージュ柄のオールオーバープリントデニムが登場します。そしてシアリングコートは、70年代に祖母の毛皮のコートをダンディーに着こなしていたポールの友人たちのスタイルに影響を受けています。

30年前、ポール・スミスのウィメンズウェアはメンズウェアを再解釈した定番への要求を満たすべく誕生しました。2020年秋冬コレクションにおいても、メンズから大きく影響を受けるウィメンズは同じテーマで健在です。

Styling by Max Pearmain
Hair by Anthony Turner
Make-Up by Lynsey Alexander and the M·A·C PRO team