A SUIT TO IMPRESS IN

ステートメントスーツを着るべき理由（とその方法）

スーツは廃れることなく、進化しています。カラースーツやチェックスーツからプリントブレザーまで、自分らしさを主張する“ステートメントテーラリング”は存在感を示し続けます。その魅力を最大限に引き出すための手引きをご覧ください

スーツは過去100年間ほとんど変化していない洋服であり、男性のワードローブの中で最も伝統的で保守的なアイテムであると考えられています。しかしポール・スミスの「Five Pillars of Tailoring（テーラリングの5つの柱）」が証明するように、現代のメンズスーツは、スマートなビジネススーツから、今回のテーマであるステートメントスーツやメンズデザイナーズスーツまで、さまざまな種類があるのです。ドレスコードが緩和されつつある今、カジュアルな服装ではなくスーツを選ぶことは、それだけでステートメントと言えるかもしれません。しかし、一般的には、ユニークなスーツや、パターン、カラー、カッティングなど、何らかの形で慣例や型にはまらないものをステートメントスーツと呼びます。ここでは、そんなスーツの着こなし方をご紹介します。

ステートメントスーツとは何か

男性向けのステートメントテーラリングやデザイナーズスーツは、決して目新しいものではありません。70年代にデヴィッド・ボウイやジミー・ペイジが着ていたスタイリッシュなスーツを思い浮かべれば、昔から「主張」のあるステートメントスーツが存在していたことが分かります。しかし最近では、よりリラックスした大胆なスーツへとシフトしています。カラースーツやプリントスーツ、柄物のスーツなどが一般的になり、ゆったりとしたカットやレトロなシルエットのスーツを目にすることが多くなってきました。つまり、ステートメントスーツは、オフィスで着るような典型的なスーツとは一線を画すものを指します。

ステートメントスーツはいつ着るべき？

テーラードスーツのスタイルが変化を遂げるとともに、着用する際のルールも変わってきています。テーラリングがより大胆になり、堅苦しさが緩和されるにつれ、必ずしもオフィスや特別なイベント、フォーマルな場のみで着用されるものではなくなりました。むしろメンズのステートメントテーラリングはトレンド志向で、日常やカジュアルなイベントでのリラックスした選択として注目されるようになってきています。それは、パンデミック以降、私たちが再びドレスアップしたくなったことの表れなのかもしれません。というわけで、この質問に対する答えは、着たいと思ったときにいつでも、ということになります。

モダンなスリーピーススーツ

スリーピーススーツは、往時の名残とされることも多い、最も伝統的なビジネススーツであると言えるでしょう。しかし、ポール・スミスの2023年春夏コレクションでは、こうしたイメージを覆し、スリーピーススーツを徹底的にモダンにアレンジしました。それは、ワークウェアにインスピレーションを受けたリラックスシルエットのジャケット、ゆったりとしたトラウザーズやショーツ、そして現代のウエストコートに相当するVネックベストで構成されています。伝統的なスーツ生地に加え、ギャバジンのような比較的新しい生地を落ち着いたパステルカラーのパレットで仕立てることで、ポール・スミスのスリーピーススーツはメンズテーラリングの永遠のアイコンのひとつを斬新にアップデートしています。

柄物とプリントのスーツ

昨今のレッドカーペットや授賞式の写真を見れば、プリント柄のスーツがますます人気を集めていることが分かります。これは、ミニマリズムの反対、マキシマリズムを支持するファッションの再来に起因するところが大きいでしょう。ポール・スミスのアーカイブにざっと目を通せば、ポールが柄物のスーツに長く親しみ、花柄のスーツや幾何学的な柄のスーツ、グラフィックデザインなど、あらゆるものを試してきたことが明らかです。例えば2023年春夏コレクションでは、ポール・スミスの象徴であるストライプが夏らしいパステルカラーのフェイドストライプで登場し、タイダイ染めのトレンドをいっそう洗練した形で表現しています。柄物のスーツは必ずしも仕事の場にはふさわしくないかもしれませんが、うまく着こなすコツは簡単で、ジーンズやTシャツを着るのと同じように自信を持って着ることです。

チェック柄のスーツ

チェック柄のスーツは紳士が田園地帯で着るようなツイードのスーツを思い起こさせ、伝統的、もしくは「古風」と捉えられているテーラリングのひとつです。冒険的な選択とは言い難いでしょう？しかし、より大胆なチェックや斬新なカッティングで、その常識を覆すデザイナーが増えつつあります。どんなチェックを選ぶかによって、メンズのチェック柄のスーツはすっかりモダンなスーツのオプションになり得るのです。オーバーサイズのウィンドウペーンチェック、カラフルなプリンスオブウェールズチェック、印象的なタータンチェックなど、存在感のあるスーツに注目してみてください。

カラースーツ

80年代にパウダーブルーのタキシードが大流行したように、男性のカラースーツもまた新しいものではありません。欧米では、パステルカラーのテーラリングは、これまでもウエディングスーツとして、ゲストにも新郎にも人気のあるアイテムでした。昔と違うのは、最近ではほとんどの色が受け入れられるこようになったこと。その一例として、ポール・スミスのテーラリングでも、ここ数年、ネオンオレンジからコバルトブルーまで、幅広い色を展開してきました。カラースーツは、フォーマルなワードローブに明るさと個性をプラスしてくれる頼もしい存在なのです。

花柄のシャツ&スーツ

デザイナーとして、ポール・スミスはつねにメンズコレクションに花柄を採用してきました。そしてフォトグラフィックプリントやデジタルプリントで、一際目立つリアリスティックで大胆なデザインを生み出してきました。テーラリングにおいては、スーツという男性らしさの象徴と、花柄という女性らしさの象徴とを組み合わせているのが花柄のスーツですが、これこそが70年代を彷彿とさせるトレンドが再び注目を浴びている理由です。花柄を試してみたいけれど全身に纏うのはちょっと・・・という方には、花柄のスーツに次いで魅力的な花柄のシャツがおすすめです。小花柄であればどなたでも試しやすく、クラシックで落ち着いた色であれば、ビジネススーツにも合わせることができるのです。

テクスチャード（質感ある素材の）スーツ

はじめに、質感ある素材を使用したスーツがすべてメンズのステートメントスーツの範疇に入るというわけではありません。というのも、ビジネスシーンにふさわしいクラシックなシャークスキン、夏らしいホップサック、千鳥格子のツイードなど、どんなスーツ生地にも質感があります。ただ、テクスチャーを意識することで主張ができるのは確かです。ジャカードは、緻密な柄が織り込まれていることが多いので、より印象的なものをお探しの方におすすめしたい生地です。日常的な選択肢としては、コーデュロイのスーツも良いでしょう。細畝や太畝のコーデュロイのスーツは、今のトレンドにマッチしているだけでなく、着心地も抜群です。

スリムVSオーバーサイズスーツ

フィットというのは非常に特殊かつ主観的なもので、人によって好みが分かれますが、ファッション性の高いスーツにおいてはなおのことです。肩幅にゆとりがある方が良いという方もいれば、スリムなシルエットがお好きな方もいるでしょう。しかし、個人の好みがあるとはいえ、スーツのカットが印象を大きく左右するのも事実です。一般的に、細身でスリムなスーツ（スキニースーツとは異なります）は、よりスマートで伝統的なスタイルに見えます。一方で、いま再び脚光を浴びているのはゆったりとした、アンコン仕立てやスラウチーシルエット、オーバーサイズのスーツなどです。ワイドなラペル、長めの丈のボクシーなジャケット、ワイドレッグや裾がフレアなトラウザーズは、いまや主流となっています。

ステートメントスーツのトラウザーズ

テーラリングの話題で後回しにされがちなトラウザーズですが、スーツ用のトラウザーズ（テーラードパンツ）の最も一般的なスタイルはノータックで、他にセンタープレス入りのタイプがあります。一方、現代の男性のステートメントスーツのトラウザーズを表現するとき、そこには「誇張」というキーワードが思い浮かびます。股上がルーズで、リラックスしたシルエットで、ワイドなテーラードパンツの台頭は、70年代（現在ファッション界が夢中になっている年代）を想起させ、男性のドレスコードのルールが緩和されたことを意味しているでしょう。

ステートメントシューズ&ブーツ

かつてスーツに合わせるメンズシューズといえば、オックスフォードシューズ、ブローグ、ダービーシューズ一辺倒でしたが、テーラリングが進化しているように、スーツに合わせるシューズもまた変わりつつあります。最近では、男性のスーツシューズにはさまざまな種類がありますが、その中でも特にゴツくて厚みのある「チャンキー」なスタイルがポピュラーです。ローファー、ダービーシューズ、ブーツのいずれにおいても、大きなソール（溝の有無は問わず）は必須条件と言えそうです。また、最近ではモーヴカラー（薄紫）、オックスブラッド（赤茶色）、グレーなど、ポール・スミスの最新コレクションに見られるような正統派でない色も増えてきています。

スーツの裏地について

頭のてっぺんからつま先まで大胆に着こなすのはハードルが高い・・・という方でも、ステートメントスーツやテーラリングを試せる別の方法があります。それは、裏地に色や柄を取り入れることです。ポール・スミスのシグネチャーとして何十年も愛されてきたステートメントライニングなら、似通ったテーラードスーツの群れから、控えめながらも個性を際立たせることができます。